ぬる湯は、体温を上げるのか、下げるのか?

「温泉はぬるいですけど、入っていると、不思議と体が温まりますね」

という、言葉をよくお客様からいただきます。実際にその感覚は、私自身の経験としてもあります。身体がポカポカするというか、じんわりするというか、弛緩しているというか、なんともいえない心地よい感覚です。

人間の平均的な体温は、テルモ体温研究によると、個体差、年齢差、時間差はあれど、おおよそ36~37度程と言われています。※計測方法や、時間帯等もご興味ある方はリンクへどうぞ※

ちなみに、温泉の温度は35度前後です。季節による外気温の変化や、温泉の調子による多少の温度差、揺らぎはあるにしろ、だいたい平均値は35度くらい。

平均的な人間の体温よりも、むしろ低いわけです。なのに、温泉に入浴後にポカポカする感覚になるのはなぜでしょうか?

一つに、副交感神経の働きがあることが考えられます。ぬるい湯に長い時間入浴していると、副交感神経が優位になります。これは、人間が睡眠をするとき、休む時に優位になる自立神経です。眠りにつくときに人間の表面体温は少し上がります。赤ちゃんが眠い時に手足が暖かくなることを思い出してください。大人もなりますけども。

これは、手足の末梢神経の血流を巡らすことで放熱して深部体温を下げて体をお休みモードにしているのです。熱を下げるために、熱を放出する、結果一時的に表面温度は上がるということですね。

その証拠に、湯治で長湯をしたあとは身体が少し重く感じ、とろーんと眠気に誘われます。温泉が副交感神経を優位にさせ、お休みモードにいざなってくれていることが分かります。

ぬるい温泉に入浴後にポカポカする感覚の一つには、この現象が関わっていると考えることができそうです。身体がお休みモードに入るために、熱を放出していて、その影響でポカポカと感じるのかもしれません。

しかしながら、こういった体のメカニズムは何か一つだけ、限定的な要因とは限りません。様々な要因が複合的に絡んで私たちの身体は機能していますので、そうかもしれない、温泉ウンチクの一つとして楽しんでいただければ幸いです。