私達の役割とは?

こんにちは、若旦那の星です。

私達の使命、役割、と言うちょっとお堅いので、お仕事とでも言いましょうか。
それは「休んでいい」「何もしなくていい」と、
お客様に思ってもらうこと、感じてもらうこと、最近強く思います。

自在館には、よくこんなお問い合わせがあります。
「湯治って、何をすればいいんでしょうか?」

私達の答えはこうです。

何かしようと思わなくて結構です。お風呂にゆったり入るだけ。
敢えて言うなれば、お風呂に入って、眠くなったら、たくさんお昼寝をしてください。

私はお客様からの「湯治って何をするの?」と言うご質問には、あえてそのまま受け取らないようにしています。
もちろん「湯治」のことをご存知ないという方はたくさんいらっしゃいますので「ただ内容を知りたい」ということも当然そのままの意味としてあります。

しかしもう一方では、皆さま
誰かに「休んでいいんだよ」と、背中を押してほしい
そんな気がしているのです。

人は、自分自身や他人の良い面を美化する傾向があります。
アスリートの成功秘話、名経営者の格言などなど、自分を律すること、努力をすることが正しいと謳っています。それは、全くもって正しい。ですが、人間それだけではありません。
有名なスポーツ選手は「肉体を休める」ことの大切さを知っています。筋肉は適切な回復期間を取ることで成長するからです。
名経営者と呼ばれる人達も、休養の大切さを知っているからこそ、会員制のホテル会員になるのだと思います。それだけ、休むことが大切だと知っているのです。

ですが、あまり世間にはそういう話は届きません。努力している姿ばかりが切り取られ、印象に残ります。
人は人が頑張る姿に感動し元気をもらい頑張ることができる、それはとても素晴らしいことですが、
その半面で、休むことはよくないことだと思い込み、無理をしてしまっている時もあると思うのです。

「人生は短い、だから限られた時間を有効に使わなければならない。自己投資をしなさい、その時間があなたの人生を豊かにするから。継続して努力をしなさい、その努力がきっと道を開くから。」その通り。仰る通りです。でもそれと同じくらい、

良い静養はきっとあなたの人生を豊かにする

と私達は、世界の端っこでこっそりささやき続けたいと思っております。
「頑張ろう」という人が多いので、少しくらい「ちょっと休もう」と言ってくれる場所があってもいいかなと、思っております。
なぜなら、この場所は400年以上もそうしていろんな人々に親しまれてきました。きっとそれだけ、どんな人にも時代にもそういう場所が必要な時があるのだろうと思います。

ちなみに、自在館の犬はだいたいいつも寝ているのですが、
犬や猫など動物は本能的に、必要でない行動以外の時は眠るそうです。
それは必要な時に狩る、あるいは逃亡する、避難する、食べ物がいつ手に入るか分からないので無駄にカロリーを消費しないようにするためです。また、疲れた脳では、瞬時の命に関わる判断を誤る確率が高くなり、疲れた肉体では、敵から逃げ切る確率が低くなります。
休むことが、生命にとってとても大切なことは人間にとっても同じです。
ですが人間の赤ん坊は、眠たいのになかなか自然に寝入れません。大人になっても、気付けば「休むこと」にすらコスパ、タイパを気にして、ことさら何もしない時間が減り続けてきているように思います。

あらゆる面で選択肢が増え、私達の生活環境は豊かに便利になりました。
よほどの事件や事故でない限り、命を落とすこともなくなりました。
それは本来とても素晴らしいことのはずなのですが、
命を落とす危険が減ったかわりに、豊かに生きるための苦労が始まり、
命を守るための休養から、豊かに生きるための休養に変わってきている、
そんな気がしております。

頭を空にする、ぼーっとする

それは一見簡単そうで、実はとても難しいことだと、私達は坐禅を通して実感しました。
人は常に何かを感じ、休もうと思っても脳は勝手にいろいろなことを思いつき、考えてしまいます。「休む」ということが、実はこれほど難しく、深いことなのだと感じます。そのようなことを知り、感じ、休むことへの考え方や姿勢に少しでもよい変化があれば、私たちはとても嬉しく思います。

不定期ではありますが、館内で坐禅体験を行っております。ぜひお試しくださいませ。


▼温泉+禅で、よりよい静養を
https://www.jizaikan.jp/blog/various/health/5248/


人は意識して休まなければ、本当の意味で休むことができない
休むことは、努力することと同じくらい難しくなってきている・・・

100年前の古写真や記録を見たり、先代・先々代の話を聞くと、人々の暮らし方過ごし方の変化の大きさとは裏腹に、健やかに生きたいという願いは変わらないのだなと感じます。
自在館で過ごされている常連さん達を見ていても、老若男女問わず皆さま、ここにしかない自然環境や温泉、館内やお食事のちょっとした変化や工夫を楽しみながらも、そんなに多くのことを求めてアレコレしようとされていない、むしろ休むことに重点を置いている方が多いように思います。

周りにはコンビニも何もない、源泉温度も35℃と、正直はじめてお越しになられた時はハードル高めでしたでしょう。日本は温泉大国なので、もっとお近くに便利で整った設備の施設はいくらでもあると思うのですが、それでもここを気に入って、足繁く通ってくださるのは何故だろうか?

この場所でこの温泉に癒されること

きっと、ここへお越しくださるお客様にとってはそこが大きいように思います。
自然湧出ですので、この温泉がいつから湧いているのか、またいつその流れが止まるのか、それは誰にもわかりません。
ただ、湧き続ける限りはなるべく変わらない姿で、とは言えちょっとした変化や創意工夫も楽しみながら、この場所と温泉を、お薬師さまの傍らで見守り続けたいと思っております。

同じお客様でも、ライフステージや、環境、体調の変化によって、働き方と共に、休み方も変化するものだと思います。
ひとくくりに温泉旅館・ホテルといっても、それぞれに異なる個性、役割を担っているからこそよいのだと思います。

ここへお越しくださるお客様にとっての「より良い静養とは?」
私達はそんなところを、お客様と一緒に楽しみながらやって参りたいと思っております。